幕末異聞ー参ー


「…貴女は美しい方ですね」


自分が言ったことに対して真逆の言葉を返す沖田に、琴の涙はより一層勢いを増す。


「私は貴女が羨ましいです。自分が目を反らしたいと思う事にしっかり向き合える」


「…沖田…様?」

琴は何かを憂いているような、どこか艶のある表情の沖田から目が離せなくなっていた。
空全体が藍色になり、二人の間に流れる重苦しい沈黙を誇張する。



「お琴さん、すみません。私は貴女を幸せにすることはできません」

小さく、けれどはっきりと琴に自分の意志を伝える沖田。
琴は俯いたまま、何の反応も見せない。

「私は新撰組の隊士として生きると決めたのです。この命が新撰組の役に立つのなら、喜んで差し出そうという人間です。だから…私は貴女を心から愛す事はできません」

ゆっくりと頭を下げる沖田は最後に、ごめんなさいと呟いた。




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