幕末異聞ー参ー


「伊東大蔵…ね」


「北辰一刀流の道場に通ずる者には知れた名だよ。北辰一刀流を修める前は、神道無念流も修得した凄腕の人物だ。学にも秀でていて正に非の打ち所がないと評判だよ」

「非の打ち所がない人間なんて逆に信用ならねぇな」

「ははは、土方君らしい意見だ」


今年も残り少ない秋の風を全身で受け止めながら、局長の帰りを待つ土方は表情を硬くしていた。その隣には苦笑する山南の姿があった。



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