幕末異聞ー参ー
「ありゃ悪代官なんてかわいいもんじゃねぇだろ。今にも斬りかかってきそうじゃねーか!ただ普通の顔しとけばいいんだよ!!」
「ほぉ。人の普通の顔がそんなに凶悪に見えるんか?頭だけじゃなくついに目も腐ったか阿呆副長殿」
門の外にいる誰よりも偉そうにゆったりとした歩幅で沖田と土方に近づいてきたのは、淡い光を放つ提灯を振り回す楓であった。
「その口角引き吊らせて笑うのやめろ。余計悪人面になる」
土方は至極怪訝そうな表情で一歩足を引いた。
「楓は無表情にしてた方がまだましかもしれませんね」
「うちなりの満面の笑みで迎えてやる」
「…やめてくれ」
楓の何か良からぬことを企んでいるような顔に素早く気づいた土方が咄嗟に止めに入る。そして、あまり目立たない場所に問題児二人を並ばせると、土方自信は山南と共に道屯所の門の前で局長の帰りを待った。