幕末異聞ー参ー

「き…きき、貴様ーっ!!兄上に向かってなんて無礼な振る舞いを「三木!」


顔を紅潮させて腰の獲物に手を掛けたところで、氷のように冷たい声が三木の動きを制した。
最悪の事態を免れたことに、そこにいたすべての人間が胸を撫で下ろしていた。


「あ…兄上!なぜ止めるのですか!?こんな女子に軽口を叩かれたのですぞ!!?」

「黙りなさい。入隊早々、私に恥をかかせるつもりですか?」


兄のために青筋を立てていた三木を叱咤したのは、怪訝な表情を浮かべた伊東だった。

「僕はそんなつもりは…」


庇ったはずの人物からの制止に動揺した三木の顔が冷や水を浴びたかのように青ざめていく。冷静になった頭で辺りを見回した三木ははっとした。
自分達を取り巻く者たちの目が困惑の色を浮かべている。
三木はここで初めて自分がしていることが兄の印象を悪くしていることに気がついた。



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