幕末異聞ー参ー
「なんか面倒だな」
「不参加で殴られたいんなら出てけよ」
「土方さんの拳痛いんだよなー…」
「じゃあ大人しく座ってろ」
局長と伊東一派の出迎えを済ませた隊士たちはすぐに解散という訳にいかなかった。
見回り当番以外は速やかに大広間に集まるよう土方から命令されたのだ。
やっと夕食にありつけると思っていた原田は、空の腹をぐうぐう鳴らして胡座をかいた。
「どうせ伊東一派の自己紹介だ。そんなに時間はかからないさ」
隣に腰を下ろした永倉は原田の腹をバシッと叩き、少し我慢しろと苦笑する。
暫しの間隊士たちが談笑していると、上座の襖が音を立てずに開いた。
まず始めに入室したのは局長である近藤。そして総長の山南、副長の土方と続き、その後ろから伊東と新入隊士数名が姿を現した。
「皆、待たせたな。これより、伊東甲子太郎先生より新たに新撰組に加わる同志を紹介していただく。これから新撰組は多忙になるだろう。早く環境に慣れてもらうよう、皆協力するように。
では先生、お願いします」
近藤がここに隊士を集めた趣旨を簡潔に説明すると、土方の斜め後ろに控えていた伊東が小さく頷き微笑んだ。