幕末異聞ー参ー
「皆様、お初にお目にかかります。近藤局長からご紹介にあがりました伊東甲子太郎です。
以後お見知りおきを」
深々と頭を下げる伊東に下座からの視線が集まる。
「そしてこちらに控える者たちが必ずや新撰組のお力になるであろう私の同志でございます。
順に、私の実弟である三木三郎、篠原泰之進、内海次郎、加納鷲雄、服部武雄、中西昇、毛内有之助、富山弥兵衛、阿部十郎、橋本皆助、清原清、新井忠雄。文武に長けている精鋭たちです」
伊東に名を呼ばれた十二名はよろしくお願いいたしますと声を揃え、隊士たちに向け会釈をした。
全員が頭を上げたのを確認すると、伊東は熱っぽくこう続けた。
「日本は今未曾有の危機を迎えています。夷狄(外国)の侵略、日本の象徴である天皇のお命を狙う輩の存在。
これらの脅威から日本を守るには“尊皇攘夷”に基づいた行動が必要不可欠なのです!」
「あんたの言う“尊皇攘夷”は長州の野郎共が言う“尊皇攘夷”と一体何が違うって言うんだ?」
力説する伊東に待ったをかける声が大広間に響き渡った。その声は酷く苛立っている。
「土方君…」
山南が心配そうに伊東と声をあげた張本人の土方の様子を交互に伺う。