幕末異聞ー参ー
「近藤さん!何で俺に報告してくれなかったんだ!?」
久々に人の気配が戻った局長室に怒鳴り声が轟いた。
「す…すまん。帰ってから話せばいいと思って…」
怒りの矛先はこの部屋の主、近藤であった。
局長の威厳の片鱗すら伺えないほど情けない表情である。
「幹部がしっかり連携をとれてないとまだ未完成な集団だと思われるだろう!?特に伊東のような頭のいい奴には舐められる!」
「歳、少し声を抑えてくれ。伊東さんや隊士に聞こえたら困る」
「……ちっ」
おろおろする近藤を睨み付けているのは土方。
どうやら、伊東と討論した時のことに腹を立てているらしい。
「あんたと伊東が江戸で話し合いをした上でここに来たって知ってりゃ俺はあいつに食って掛かったりしなかった」
「…土方くん、意外と根に持つんですね」
「なっ…!山南さんも見ただろ!?あいつが鼻で笑ったの!普通頭にくるだろ!」
土方の隣に座していた山南は悠長に笑う。
「それに、気に食わないのはさっきのことだけじゃねぇ」
「「?」」
まるで子供のように口を尖らせた土方は唸るように呟いた。
思い当たる節がない近藤と山南は不思議そうに顔を見合わせる。