俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
「あのね…うそですって言ってるようなもんよそれ」
「……きょおここあい」
「はっ!?」
急に涙目になるあたしを見て、ぎょっとした顔を作る杏子。
「えーん……むりぃ~!」
「わ、分かったからもう泣かないの! ったく…あんたいつも急に泣き出すんだから」
「だって……」
半泣きで杏子に抱きつく。
そして、情報通の杏子なら知ってるかも、と思って聞いてみることにした。
「ねえ……屋上にいて二年か三年の人で茶髪でものすっごーく素敵な顔で背があたしより三十センチくらい高くて横暴な男の人って、いる?」
「……」
聞いてみる…と、黙ったままであたしをじっと見つめるので、呆れているのかと思った。
思ったのに……。
「いる」
「いるの!?」
まさかそんな答えが返ってくるとは思っても見なかったので、必要以上に驚く。
「ただし、横暴かどうかは知らないけどね。…噂は本当だったのね~」
「うわさ?」
抱きついていた腕を放し、杏子の顔を覗き込んだ。