俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
「でもそれも、いずれは分かることなの。だから頑張んなさい」
「う、うん……?」
よく分からなくて、曖昧に返事をした。
でも……でも。
やっぱり先輩はあたしの手の届かない人のはずなわけで…。
なにをか分かんないけど、頑張るなんて。
「どうしたらいいと思う?」
「そうね…悪いなって思ったんでしょ? じゃあ謝ってみたら?」
「……」
そうだよね。
そうなんだけど……。
下を向いて床に人差し指で弧を描くあたしに、杏子はさらに言った。
「仮に先輩が何も気にしてなくてもよ? 自分がすっきりしたいでしょ? 大体、人が謝る理由なんてほとんどそんなもんよ」
た、たしかに……。
先輩は優しいから、なんだかんだで「なにが?」っていつも許してくれた。
でもあたしはやっぱり「ごめんなさい」は言いたいし…。
「ありがとう…杏子」
自分の中で揺らいでいたぼやけて見えるものが、確かに固まった。
それが見えるようになるのは…杏子の言う、いずれ分かったときなんだろうか。
それとも……まったくの別物なのか。
それすらも、なにもかもすべて。
まだ分からない状態だけど、焦らず時を待つことにした。