俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
「杏子……」
杏子の優しい声を聞くと、一気にまた視界が揺らいだ。
胸の中心が熱い。
『悠由? 泣いてるの? …今どこ。行くから言いなさい!』
「こうえん……」
『公園…? …ああ、あそこね、分かった。待ってるのよ!』
言い切るか言い切らないかのうちに電話は切れた。
プーップーッと機械音の鳴る携帯を抱えて、声をあげずに泣いた。
「悠由!」
十数分後、杏子の遠い声が聞こえた。
泣きはらした顔を上げると、走ってくる彼女が小さく見える。
「悠由!」
近くまで来ると、持っていた鞄を投げ出してあたしを強く抱きしめた。
「馬鹿……心配したのよ?」
「ごめんなさい……」
ダメ…。
今人の温もりに触れると、また涙が出てくる。
優しさが嬉しい。
でも同時につらい。