俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
なにも言わずにただ抱きしめてくれる杏子。
こんな親友に恵まれて…あたしは幸せだ。
本当に…幸せ者なんだ……。
しばらくして、杏子はやっと落ち着いたあたしをベンチに移動させ、真剣な顔をする。
「誰?」
「え…?」
「誰があんたを泣かしたの?」
そう言った杏子の目には、怒りがこもっているようだった。
「……あたし、だよ…」
「え?」
あたし。
あたしがそもそも…先輩と関わらなきゃよかった。
そしたら誰も傷つかないし、あたしも泣かないですんだ。
好きになっちゃいけない人を…好きになることもなかったんだ。
「どういうこと?」
分からないといった様子で聞き返す杏子に、ゆっくりと言った。
「あたし…先輩が好きだよ」
「悠由…!」
それはもう、紛れもない事実。
認めたくなかった事実。