俺様狼と子猫少女の秘密の時間①

それでもあの場に入れば、きっと抑えが利かなくなっていた。

だからって…震えながら力なく握ってきた悠由の小さな手を振り払ってしまうなんて。


…違う。

あのとき…握り返して、「大丈夫だ」って…言ってやればよかったんだ。



朝の自分のしたことすべてに後悔した。


「くそ……」


金曜はせっかく…戻りかけてたのに。

ふりだしに戻りかけてたのに。


また、あいつは俺の手の届かないところへ行ってしまっただろう。


繋いでいた手を眺め、それを恨めしく思いまでした。



「…りゅーうーきくん」


そんな機嫌の悪い俺に、さらに機嫌が悪くなりそうな声をかけてくるやつがいる。


「……死ね薫」


「なぜいきなり?」


中井と同じく中学の同級生の、久遠薫(クドオカオル)。

なにかと付きまとうこいつのうざいことといったらない。


「機嫌悪いでちゅねー」


「…死ね薫」


「だからなんで」


他に当たるとこがねーからだよ。


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