俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
最後の聞き捨てならない一言に、ついピタリと足を止めてしまう。
…なぜ……下の名前…。
よく考えれば、誰もが苗字で呼んでいた。
今までもそれしか聞いたことがなかった。
そーっと声の主のほうを振り返る。
「きゃーーっ言っちゃったあ!」
「やっだもうゆう子ったら~!」
「勇気いったー…」
…………。
言ってみただけかい。
きゃーこら言う“ゆう子”を思いっきり睨みつけた。
「悠由……顔怖い」
…ハッ。
しまったしまった。
杏子に言われ、ぺたぺたと自分の頬に触れ…ニッと口元をつり上げた。
「それでも怖いわよ?」
「……」
歯を見せたまま…固まらざるを得なかった、とー…。
まったくもう杏子ったら容赦なさ過ぎ!
笑顔を作ろうとあれこれ表情を作りながら、教室へフラフラと向かった。