俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
「わけわかんないこと言ってないの! さ、早く行こ」
「はーい」
腕を引っ張られ、足がもつれそうになりながらもなんとか走った。
早めに来過ぎたせいか、教室にも廊下にもほとんど生徒の姿はない。
「杏子いつもこんなに早いの?」
「うん。…悠由こそ、今日妙に早かったのね」
「那智兄から逃げてきたの」
「ああ…あのシスコン兄さんね」
杏子にかかると、那智兄までもがシスコン扱い。
あたしなんて、「ブラコンだしシスコンだしアンタってほんと恋愛向いてなさそう」…だし…。
失礼なっ。
あたしだって…好きな人の一人や二人…。
……お、思い浮かばない…。
「…?」
不審な目で見てくる杏子の隣で、しくしく落ち込んだ。
あたし……杏子に見透かされてるっ。
早く来たと思ったのに、そうこうしているうちにすぐ始業時間になった。
時が経つのはほんとに早い…。
「Xをー…ここに代入して…」
しかもいきなり、大嫌いな数学。
も……やっ!