俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
いや…気付かないフリをしよう。
なんとなく言いたくない。
というか言わないほうがよさそう。
「ね、ねえ那智兄。由那とかママは?」
「んあ? ああ…まだ下…」
「そうなんだあ」
来てくれたんだ。
大したこと無いのになー。
先輩が大げさに病院なんて連れてくるからぁ……あ。右手は…ちょっと大したことあったのか。
「う~む…」
やっぱり先輩が帰っちゃう前にお礼言っとけばよかったなあ。
それにあんなそそくさと帰らなくたって……。
「……」
「ど、どうした悠由? 痛いのか?」
「…うん」
寂しくって心が痛いですぅ…。
今は…那智兄じゃなくて、先輩がよかったかも…。
心の中でため息をついた。
「どこが痛い?」って焦って聞いてくる那智兄の言葉なんて耳に入ってこなかった。
ていうか…こんなのあたしの那智兄じゃないよー。
ほんとにみんな心配性……。