俺様狼と子猫少女の秘密の時間①

「ふう……」


短く息を吐いて、下向き加減に歩いていた。

…と、そのとき。


「邪ー魔」


「捨てられたくせしてね」


「っ…!?」


心臓がドクンと大きく脈打った。


この声。

この声を聞くと…右手が痛む。

他の治ったはずの部分までズキズキする気がする。


「あたしらの忠告聞いてりゃよかったのにねー?」


言うだけ言うと、くすくす笑いながら通り過ぎていった。


「……」


あたしはというと、ぴたりと足を止め、床を睨んだまま固まっていた。



…怖い。

怖いよ…先輩。

先輩がいなくなっちゃったらって怖かったから…そばにいてほしかったのに。


…いて……ほしかったのに…。



「あれ? 悠由?」


また泣きそうになっていたところへ、一足遅れて杏子と美紅ちゃんが来た。

慌ててにじみかけた涙を拭い、振り返る。


「先行ったんじゃなかったの? なにやってんのこんなとこで…」


「あ…ううん。えーと……あ、ま、待ってたの。そう待ってたの」


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