俺様狼と子猫少女の秘密の時間①


――五年前。


「っきゃあ!」


「お母さん! お父さんやめて!」


「うるせえぞ…立夏(リッカ)」


……またか。

また…アイツは母さんを殴ってんのか。


当時小六だった俺は、口を出そうにも出せなかった。

俺にとって絶対だった姉貴……立夏でさえも、あの親父に虐げられていた。

それが妙に怖かったんだ。



「っ……」


「お母さん…っ!」


口を切ったのか血を流して座り込む母親を、庇うようにして立つ立夏。


俺は……俺はなにをしてんだ?

こんなところに隠れてただ眺める…。

なにをしてんだ?


怒りが湧き起こって、強く拳を握り締めた。


それでも……それでも、俺は出て行けなかった。

立夏が俺を…守ろうとしてくれていた。

自分が母親の前に出ることで、俺と母親を守ろうとしていたんだ。


そんな強い姉貴を見て……俺はどこか、安心していた。


立夏さえいてくれれば……大丈夫だ、と。


…いつからだろう?

俺は全面的に立夏を頼っていた。

当然親父などより…ひょっとすると、母親より。


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