俺様狼と子猫少女の秘密の時間①

そして俺が小学校を卒業する直前のことだった。



『IT会社社長篠原龍雅氏が、横領の容疑で逮捕されました』



そんなニュースが世間を賑わせたのは…。


「お父さんが逮捕ですって…!?」


いつもいつも、暴力しか受けていないのに。

家のものもほとんど壊されてしまって…。


それなのに母は、逮捕された親父を心配した。


「母さん……あんなやつ逮捕されて当然だ」


俺は何度もそう言った。

だが母は……そのたびに、こう返すんだ。


「龍樹。逮捕されて当然な父親なんていないのよ? どんな人でも人の親なら親なの」


…いるだろう?

いるだろう、母さん。逮捕されて当然なやつが…。


それにあいつにとって、俺達は自分の子じゃなかった。親じゃなかったんだ。

だから……立夏にも手を出したんだろう?

俺の存在は、眼中になかったんだろう?

違うのかよ…なあ母さん。



…憎かった。

やつれた母を見るたびに、親父への怒りが蘇った。

なぜ……なぜ、このことは罪に問われない?

母さん…なんで庇うんだよ。あんなやつ。


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