俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
その後一年、あの親父がいなくなったおかげで母親はずいぶんと元気になった。
怪我もなく……金遣いも荒いやつがいなくなり、安定した。
それが嬉しくて、俺は気がつかなかった。
誰よりも……誰よりも大好きで、誰よりも強いと信じていた姉貴の異変に。
「龍樹……」
「あ?」
「ごめんね?」
「…え?」
その日、その言葉を残して学校へ行ってしまった立夏。
なにか胸騒ぎがして、落ち着かなかったけれど。
自分も学校があったために……なにより、立夏だから。
立夏に限って俺を心配させるわけがない、と。
そう信じていたから、気に留めなかった。
「立夏が……!?」
ガッシャーン…と、母さんの落としたカップの割れる音が妙に大きく響いた。
立夏が……自殺した…?
うそだ…うそだろ?
だって立夏だぞ?
あの立夏がなんで……そんなこと?
信じられない、としか言いようがなかった。