俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
いや、信じていなかった。
だから……母さんのように泣き崩れることなどできない。
悲しい、苦しい、と。
そう思うことなどできなかった。
「放課後に……屋上から飛び降りて…」
涙ぐんでそう説明する女教諭。
「あああ…っ!!! 立夏…!!」
なに……泣いてんだよ、母さん。
立夏が……立夏がなんだって?
『龍樹っ。明日の夜ご飯、楽しみにしててよー? おねーちゃん腕振るうからね!』
誕生日だからって……妙に張り切ってたんだ。
俺の誕生日だからって…。
そんなのはいいって言ったのに。張り切ってたんだ。
買い物して…そこで。
そこの台所で機嫌よく料理すんじゃねーのかよ?
「りっ……」
…振り返った先に、立夏はいない。
ただいまーって…満面の笑みで帰ってくるはずの立夏…。
なんでだよ…おい。
早く帰ってこいよ……。
遅くなったら、晩に間に合わねーだろ?
俺より俺の誕生日を楽しみに……してたじゃねーか。
「立夏……」