俺様狼と子猫少女の秘密の時間①

知らなかった。

知らなかった……先輩が、いつもそんな悲しみを背負っていたなんて。


時々とても寂しそうな目であたしを見て…不安そうに抱きしめたのは、そのため?

漆黒の瞳が揺れ、僅かに指先が震えていた。


思い出してたの…?


「悠由…大丈夫?」


「…う、ん…」


震える体を抱きしめる。


あたしには……あたしには、想像もできない。


お姉さんとお母さんを失う悲しみ。

お父さんに対する強い憎しみ。


想像できない……ということは、理解もできない。

分かってあげられなかったら…あたしはどうしたらいいの?


あたし先輩に、なにもしてあげられないの?


「…悠由ちゃん。それでね?」


「…あ…は、はい…」


「今回龍樹が消えたのは…それなんだ」


「え…?」


「龍樹の父親が……出所したそうだ」


……!!


先……輩…!!


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