俺様狼と子猫少女の秘密の時間①
甘過ぎる狼さん
そして早くも次の日のお昼。
昨日は帰ってからも、先輩があたしの心を占めていて……あったかい手を思い出す度にあのドキドキが蘇って大変だった。
それでも今、先輩が居るであろう屋上の扉の前に立つあたし…。
昨日お礼を言い損ねたから。言おうと思ってきたんだけど…。
……あれ。
いないのか…な?
きょろきょろと見渡しても、どこにもいない。
前みたいに寝てるわけでもなさそうだ。
いつもいるわけじゃ…ないのかな。
そう思って、ちょっと落胆の息を吐いたときだった。
「今度はこんなとこでなにやってんだ」
「…………え」
背後から、呆れたような声色が振ってきた。
ゴクリと喉を鳴らし、ゆっくりゆっくり振り返る。
その先にある“壁”伝いに目線を上げると、そこに光るあたしを見る目、とバッチリ合わさった。
「あ……先輩」
目が合ったきり、どうしても離せない。
その漆黒の瞳にすべて吸い込まれてしまいそう。