闇夜に浮かぶ紅い月
女神様の実態、それは私たちの二つ上のフランスからの留学生。
我が校は県内でマンボス校と言われている私立大学付属高校で、国際交流が盛んだと有名だ。
そのため留学生が非常に多く、留学生だけの特別クラスもあれば、留学生が希望すれば普通科クラスに在籍する場合もある。
そのため、留学生は決して珍しいものではない。
その中で特に異色を放っている人物が、彼女である。
「そりゃあ、あんだけ美人でスタイルもよければ騒がれるだろ」
「へえー、酒井も?」
「目の保養には十分だな」
毎週、木曜日の昼休み、きっと移動教室なのであろう彼女が毎回のようにこのクラス前を通ることを知ったのはかなり前のこと。
ただでさえ年上で学園の女神と騒がれている彼女を見れる機会は少ない中、そうと知ったクラスの男子の行動は速かった。
毎週のようにクラスで待ち伏せしては、通り過ぎていく彼女を拝むように眺める。
いまではそれがクラスの日常で当たり前となってしまった。
「酒井はああいう綺麗な人が好みなの?」
「いや、そういうわけじゃ」
「酒井には高嶺の花より、身近な花が合っているのよねー?」
「ちょ!! 橘!!」
「へー」
なんだかんだ言って交友関係もそれなりに広く、気さくな性格の酒井は中学の頃からそれなりにモテていると思う。
中学の時から何度か彼女もいたし、告白だってたまにあるらしい。
「ああ、でもそうだな」
「何?」
「おかずにはいいよな」
「……最悪」