闇夜に浮かぶ紅い月
「い、いつ帰ってきたの?」
「さっきだ」
目を閉じたまま答える彼。
それが怒りの予兆のような気がして、なんとか逃れようと方法を探そうとするけれど思いつかない。
「……で? あれ程門限を破るなと言っただろ」
周りの友達は、みんな夜遅くまで遊んでいる。
そんな中、ここまで厳しく門限を決めて守っているのは私ぐらい。
遊び盛りな今、やっぱりこの門限には不満がたまりにある。
「だって……っ」
どう言い返せばいいんだろう。
上手く返す言葉が見付からなくて歯がゆい。
私より、何倍も上手はレオには何をいたって通じないような気がする。
どうせレオには私の気持ちなんてわからないだろう。
「お前はわかってない! 夜は危険だと何度も言ってるだろ!」
いきなり怒鳴られて、私の心臓が飛び上がる。
(なんで、いつもならこんなに……)
何かが不自然だと感じた。
あんなに喜怒哀楽の無いレオが、こんなに感情を出して怒鳴るなんて、何かあったに違いない。
レオを見たまま驚いて固まっている私に気付いたのか、彼は我に戻ったように口を押える。
「頭を冷やしてくる」
玄関にたたずむ私を残し、レオはこっちを振り返ることなくリビングに入っていった。