闇夜に浮かぶ紅い月
「下がっていろ」
「これぐらい大丈夫だよ」
私は無意識にレオの前にしゃがみこんでいた。
丁寧に、大きな破片だけをとって手のひらにのせてを繰り返す。
レオがこんなおっちょこちょいをするなんて珍しいな、と頭で考えながら、黙々と作業を進めていた。
「……さっきはすまなかった」
沈黙の中言われたその言葉は、きっと耳をよく澄ましていないと絶対に聞こえないだろう。
「私も、さっきはごめんなさい」
お互い、あえて何も返さない。
それが一番いい方法で、一番いい距離感なのだ。
「そろそろ、起きてくると思った」
「私が寝ていたの知ってたの?」
「物音ひとつしなかったからな」
今何時かと問いかければ、12時と返されて度肝を抜かれた。
リビングの壁にかけられた時計を見上げると、確かに時計の針は12を指していた。
やってしまったと後悔する反面、私を待ってくれたレオに感謝したくなった。
「夕飯食べてないだろ」
「……こんな時間に食べたら太っちゃうよ」