闇夜に浮かぶ紅い月
「絢佳、後は俺がやるから」
いつの間にか立ち上がったレオの声が頭上から降ってくる。
床に散らばっている破片は後少し。
どうせなら、最後までやってしまったほうがいいだろう。
「いたっ」
右の人差し指に、鋭い痛みが走った。
指の先にうっすらと線が入り、じわりじわりと血が滲んでくる。
皿の破片で出来た傷口は、ドクドクと痛みが増してきた。
「いたたたた。やっちゃった……。レオ?」
目を見開いたまま微動だにしないレオは、明らかに不自然だった。
「何でもない」
「……大丈夫? もしかして、調子悪いの?」
慌てて顔を背けるレオは何を言ってもこっちを向かない。
レオは鼻と口を覆うようにして腕で隠し、レオの様子を窺う様に覗き込めば、心なしか目の焦点があっていないように感じた。
不安になってきた私は、レオにそっと手を伸ばす──。
「──触るな……っ!!!」
怒鳴り声に近いような、そんな声が木霊した。