闇夜に浮かぶ紅い月


息を飲んだ。

私はレオに伸ばそうとした手を胸に引き寄せ、彼を見つける。


何かに耐えるようにくいしばっていたレオも、しばらくすると我に返ったようで、私を一度見直すとまたすぐに視線を逸らした。


「……すまない」


茫然とする私にそれだけ言い残すと、レオはリビングから立ち去っていった。


(わたし、拒否された?)


レオがリビングを去った後も、私はしばらくの間動くことができなかった。

さっきのことといい、今日のレオはやっぱりなんかおかしい。

そんな疑惑がむくむくと湧いてくる。


固く閉められたリビングのドア。

その先は暗闇だ。


(なんだか胸騒ぎがする……)


一通り拾い終わった皿の破片を塵取りに集め、レオの後を追うようにドアを開けた。

廊下に人の気配はない。

直観で玄関へと向かうと、そこにあったはずのレオの靴がなくなっていた。


まさか、出掛けたのだろうか。

そんな馬鹿な。今までにレオが何も言わず残さずに家を離れたことはないのに。


(まだ、近くにいるかもしれない)


私はよく考えもせずに、無我夢中で家を飛び出した。




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