闇夜に浮かぶ紅い月
*
「元気ないわね」
体育の授業でバレーを楽しむクラスメイト達を隅に座って眺めていた時だった。
クラスメイト達の声に混じり、智絵理が問い掛けた。
「隣、座るわよ」と一言断り、智絵理が腰を下ろした。
「そんなことないよ?」
「嘘おっしゃい。さっきの授業で先生に指されても気付かないぐらい、ボーっとしていたくせに」
見ていないようで、智絵利はしっかり見ている。
いつも私を気にかけて、気付いてくれるのは智絵利だった。
「当ててあげましょうか」
「だから、別に何も」
「お兄さんと何かあった、とか?」
私の思考が一瞬停止する。
隣で智絵利は満足げに含み笑いをしている。
「図星でしょ」
「…………どうして、そう思うの?」
「女の勘ってやつよ」
「胡散臭いし」
ゆっくりと、体を預けるように頭を智絵利の肩に乗せる。
それに答えるように、智絵利も私に体を預けた。
「絢香ってば、本当、お兄ちゃん子よね」
「そう、かな」
智絵利が優しく頭を撫でてくれるのを感じながら、目を閉じる。