らいおんとはりねずみ
東村が痛そうにあたしを見る。あたしは慌てて目を反らす。
ち、近いんだってば!
「わ、わかったから…少し離れてよ」
「無理。あ…足がっ」
返事を言い終わる前に東村は痺れと戦い始めた。可哀想だなと思うと同時に笑いが込み上げてきた。
「…何笑ってんだよ」
「いや…なんだかおかしくって」
「お前にはわかんねーよ、この痛みは」
東村がむすっとしてそっぽを向いた。ふふふ。なんだかいつもの東村からは想像出来ないや。
それから数分間、あたしと東村は同じ体勢だった。
聞こえてくるのは、部活動生の声と2人の吐息、時計の針。ほどよいリズムが刻まれていた時、東村が口を開いた。
「…悪い。もう大丈夫だ」
あたしはだっと掃除棚を逃げ出した。