らいおんとはりねずみ





東村が痛そうにあたしを見る。あたしは慌てて目を反らす。


ち、近いんだってば!


「わ、わかったから…少し離れてよ」


「無理。あ…足がっ」


返事を言い終わる前に東村は痺れと戦い始めた。可哀想だなと思うと同時に笑いが込み上げてきた。


「…何笑ってんだよ」


「いや…なんだかおかしくって」


「お前にはわかんねーよ、この痛みは」


東村がむすっとしてそっぽを向いた。ふふふ。なんだかいつもの東村からは想像出来ないや。


それから数分間、あたしと東村は同じ体勢だった。


聞こえてくるのは、部活動生の声と2人の吐息、時計の針。ほどよいリズムが刻まれていた時、東村が口を開いた。


「…悪い。もう大丈夫だ」


あたしはだっと掃除棚を逃げ出した。






< 14 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop