らいおんとはりねずみ
「ふっ」
掃除棚から逃げて、あたしが鞄に荷物をまとめていると、吹き出す声が聞こえた。声の主はもちろん東村。
「何よ、東村」
「あ、いや。そんなに慌てなくてもいいんじゃね?」
「あーんな臭い掃除棚にいて慌てて逃げるの、悪い?」
「悪くはないけど」
掃除棚が臭かったからだけじゃないんだけどな、掃除棚から逃げ出した理由は。
あんただよ、東村。
「ぶっ…はははっ」
またしても小さく笑う東村。あたしは再び東村を睨む。
「だーかーら、何?」
「慌ただしくてツンツンしてて、お前本当にはりねずみだな」
あたしは東村を見て、言葉を見つけられなかった。
だって、東村が笑っていたんだ。らいおんが優しく微笑んでいたんだ。