らいおんとはりねずみ





「ちょ…ちょっと待った!」


あたしは震える声を抑えながら、3人に向かって言った。


「あんた…誰?」


3人は変なものでも見るように冷たい視線を下した。あたしは何も答えない。


「ねぇ、あんた聞いてんの?」


あたしは名前を答えない。むしろ後悔をしていた。なんで出てきちゃったんだろう、と。


だけど踏み出したかった。あたしの心にも東村がいるって。


「ちょっとあん…」


「…だよ」


「え?何…」





「ひ、東村は、あたしとキスしたんだよっ」





3人の質問の答えにはなっていない。東村とのキスのことなんて聞かれていないから。


だけど、言いたかった。自慢じゃなくて…ただ、東村を取られたくなかった。






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