Snow Princess ~雪の華~
顔を上げると、当然だが見知らぬ男性がマリンを覗き込んでいた。
「どうした? 迷子かい?」
「無礼な! 違うわよ! 私にそんな気安く話しかけないでくださる?」
男性は少し目を丸くしたが、ぷっと吹き出して笑い出した。
「な、なによ、何なのよ!」
「いいや、何でも。こんな高飛車お姫様に会ったのは初めてでね。
どこぞのお嬢さんかい? お付の人はいないの? もしかして家出?」
「全部違うわよ!」
マリンが怒る様子を見て男はまたカラカラと笑った。
「ただ、一人でこんなところにいるのは危ないぜ? 彼を待つ間、お兄さんと一緒にデートしないか?」
そういって恭(うやうや)しくマリンに手を差し出した。