Snow Princess ~雪の華~
二階には何もなかった。
何せマリンは不躾であるとは露とも考えずに全てのドアを開けたのだ。
だが不思議とどの部屋にも誰一人としていることはなかった。
三階に上がる。
その時、また音がした。
さっきよりも音が大きい。マリンはこの階であると確信し、耳をすませてゆっくりと進む。
その階の中で、ひときわ豪華な扉の前に着いたとき、すぐ側で物音が聞こえた。
樫の木のしっかりとしたドアで、所々に小さく薔薇のレリーフの彫られている。
薔薇の名を、持つ懐かしい人を思い出してマリンは、気づかずに声に出していた。
「お母様…」
「なぁに? マリンちゃん?」
「!?」
マリンは驚いて、ドアから後ずさって離れた。
おかしい。
その声は聞こえるはずがないのだ。