Snow Princess ~雪の華~
「お母様っ! どうしてわかってくれないの? 私――マリンなのに!」
その言葉に、ローズはポカンとして「何を言っているの?」と言いたげな表情をした。
一歩後退り、マリンの手から離れると小走りで横をすり抜け少女の側に行くとマリンに向き直った。
その表情は先ほどとはうって変わり、怒ったような怯えるような顔つきで見つめる。
「あなた、誰?
私のマリンちゃんはこの子ただひとりよ」
そう言って少女の肩を抱き寄せた。
少女はあまりの衝撃を受けたマリンの顔を見つめてほくそ笑んだ。
だがそれは一瞬のことでローズには見えない。
怯えた目でマリンを見つめ、少女の陰に隠れるローズを見、芝居がかった口調で少女は言う。
「ああ、残念ながら…彼女の中に貴女様ははじめから存在しないのですわ!」