Snow Princess ~雪の華~
マリンは何がなんだかわからず、混乱していた。
自分の記憶の中の母はいつでも優しく聡明で、人から恨みを買うような人間ではない。
──いったい、何があったというの?
そんなマリンを見て、少女はほくそ笑んだ。
「あんた、城でもすごい迷惑者だって言うじゃない。私が変わってあげたら周りも感謝するんじゃないかしら?
死ぬときはいい人だったって言わせるようにしてあげるから、もう安心していなくなりなさいよ」
少女が指を鳴らすと、黒装束の男がマリンを取り囲んだ。
彼らをみた瞬間、マリンの記憶がフラッシュバックした。
母のそばのガラスの向こうから侵入してきた影と、今目の前にいる影がぴったり重なった。
「その服……そう、お母様をやったのもあなたたちだったのね」
「だーかーら、そう言ったじゃない。あ、そうそう。
私の名前を教えてなかったわね?」