Snow Princess ~雪の華~
リリアは錠を開けようとしていた手の力を抜いた。


「怖いの…」

「え?」


あまりに小さな言葉に、キーファは聞き返した。


「怖いって、どういう…?」


リリアは爪先を見つめて言った。


「私はっ…私が前に働いてたのは此処なの!」

「それがどうしたよ?」

「働いてたなんてものじゃない。ほとんど育ててもらったって言ってもいいくらい」


キーファはただ聞いていた。


「だからっ…」


リリアは顔を上げた。
険しい瞳には涙が溢れている。


「だからわかるの! あの人たちがどんなにひどい奴等か!
マリン様は絶対に私たちの比じゃないくらいひどい目に遭ってる!
だからっ、急がないと!」


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