Snow Princess ~雪の華~
「あの小娘、思ったよりもムカツクから殺すわ。
でも小娘の癖に私を見破ったの。気味が悪いから近づきたくないの」
「つまりは、こっちでやれと?」
その人は身を滑り込ませ、ドアを閉じた。
そして、ベリルのすぐ後ろに立つ。
「当ったり前でしょ?
血がいっぱい飛び散る無残な死体にしてね。後でそれをネタにこの阿婆擦れをいびるから。
わかるでしょ、ゴーシェ。いつものヤツで、いつも以上に紅くしてね」
「仰せのままに」
その人の腕から、大きな爪が三本伸びた。
──ゴーシェ?知らない名前。だけど、あれは確かに……
『大切な人の前でむごたらしく殺してあげる』
──確か惨いわね。でも、これは予想してなかったわ
マリンは壁にもたれてずるずると座り込んだ。
──結局、私は独りだったんだ……信じていたのにうそだったんだ
その爪をその場で下から振り上げた。
──ああ、殺される。
そして。
刃は振り下ろされた。
「えっ?」