Snow Princess ~雪の華~

リリアが書斎を出て行った後、再び扉が開いた。


「どうした? 忘れ物か?」

「貴方…人が話しかけるときは合言葉を必要とするくせに自分から話しかけるのは自由なのね」


鏡の中の青年はにやりとした笑みを浮かべた。
その上に、今の主の影が重なる。

リリーは先ほどの椅子に座ってため息をついた。


「あの子の受難はどこまで続くのかしら?」

「さあな。それこそその受難のおこぼれを被ってるあいつは?」

「リリアのこと? 声が出せなくてもよくやってくれてるわ」

「あいつのおかげだよ」


リリーは意味がわからず目をぱちくりさせた。


「オレが自ら話せるようになったことさ」


リリーはあぁ、と納得した。

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