Snow Princess ~雪の華~
「オレがあいつの声を奪ったのもそれが理由だ。
オレみたいに力を持ったモノが更に力をつけていくと、神様のお怒りに触れて突然力を奪われる。
何もない、ただのモノになれる」

「確かに、イカロスみたいね」


力を失う―それは自分の価値がなくなるのと同等だ。
リリーからすれば考えられないことに思えた。

だが…


「オレは力を失ってしまいたい」


話の流れから予想はしていた。
だがやはりショックだった。
リリーは目を、耳をすまして鏡と向き合った。


「オレはここでこうして何千年もこうして世界を映して見てきた。
その間にオレの体は分割され、見える世界も広くなってきたんだ。

それでもよかったんだ。

でも、長くこの国にいたらな、思ったんだ。
年という概念のないオレの前から誰もいなくなっていく。
それに、止まった世界には歪みしか生まれない」



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