Snow Princess ~雪の華~
4
リリーは書斎のソファに座って頭を抱えていた。
さっきまで辺境で流行っている新しい病気に効く薬を作っていた。
一段落して、少し休んでいるところにマリンの脱走情報。
「もう、ホントどうにかならないかしら……」
「気をしっかり持てよ」
机にうなだれるとすかさず鏡の嫌味が飛ぶ。
リリーは膨れ面で鏡を睨みつけた。
「だったら何かしらの心配の種を消して頂戴」
「そんな魔法はねぇなぁ…」
はぁ、とまたため息をついたところにリリアがお茶をだす。
リリーは弱弱しく笑ってお礼を言った。
「それよりもね、」
リリーは一際真剣な声で鏡とリリアに言った。
「シャーマがどうしていきなりマリンをどこかにやるだなんて言い出すほど変わってしまったのかが気になるのよ」
リリアは確かに、と思った。
初めての面接のときや前回の脱走事件で彼を見たときの様子からは考えられないほどの冷徹さだ。
それに、彼のほうをよく知るリリーがこういうのだ。疑うことはない。
鏡は、ただ黙っている。