Snow Princess ~雪の華~
「どうしたものか…」
シャーマはリリーの返事を必要とせずに考えこむ。
リリーは試しに魔力を顔のヴェールのように巡らせた。
そして、シャーマの背中へ目を向ける。
「!!」
リリーは息を飲んだ。
シャーマとその横に立つ秘書コーラルの背中からは確かに、ほぼ透明だがうっすらと輝く糸が伸びている。
だがシャーマの糸はコーラルのものとは決定的に違う点があった。
糸の輝きが、一定のリズムで毒々しい紫の光を織り交ぜるのだ。
その光からは、禍々しい気配が感じられる。
糸の先を目線でたどると、執務室の奥の扉の向こう。
シャーマの自室へとつながっていた。
彼の部屋には、神の御石が保管されている。
――これは、急がないといけないわね
リリーは厳しい表情で部屋を出ていった。