Snow Princess ~雪の華~

マリンは肩を震わせている。
リリアはマリンが泣き出したと思い一歩近づく。

「マリン様…」


しかし、マリンに向かって伸ばされた手はピタリと途中で止められた。

――な、に…?

決定的な違和感。
昔のスパイの感覚が変だと叫びリリアを縛る。


少しすると違和感の正体がわかった。


マリンは、泣いているのではなかった。


笑っていた。


我慢が切れたか、大きく口を開けて笑い出す。


「アハハハハ!
そうよね! やっぱりね!」


するとマリンはリリアの胸をめがけ飛びこむ。
身構えるリリア。
しかしマリンはそのままリリアをすり抜けどこかへ飛んで行った。


「………」


リリアは床にへたりと座る。
体には何の衝撃はなかった。

けれども、彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれた。

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