Snow Princess ~雪の華~
リリーはため息をついた。
全くわからない
こんなんでは本当に1、20年前のシャーマそのものだ。
どちらにせよ、出発してからはすぐそばで彼を監視することが出来る。
魔法で抑え付ければ、最悪の事態は防ぐことが出来るだろうと、安堵した。
「リリー様! 魔女様っ!」
リリーが自室に入ろうとドアに手をかけたとき、近衛兵が息を切らせてこちらに走ってきた。
「何事なの?」
「た、大変です! 先日遠征に行かれて収めた疫病が今度は西区で大流行しております!」
「何ですって?!」
リリ−は一気に青ざめた。
やはり潜伏期間の間に街から出て行ってしまった者がいたのだ。
リリーは口に手を当てて考え込む。
どうする。
いや選択の余地はない。今すぐにでも助けに行くべきである。
しかし今のシャーマ一人にマリンの元へ行かせては──!
リリーは顔を上げた。
「わかったわ。すぐに準備します。城下の薬師をありったけ集めて今渡すレシピの薬をどんどん作って現地に送ってください」
「はっ!」