Snow Princess ~雪の華~
しかしその手が何かをはたき落とすことはなく、逆にその手を何かに掴まれた。
それが何なのかもわからないで振り払おうと手を振った。
「やだっ! なんなの! 離してよっ!!」
「離しません」
マリンの声とは裏腹に、返された声は落ち着いていた。
キッとマリンが振り返ると、腕を掴んでいるのはリリアだった。
いつもの制服と違い、寝巻きのような姿で髪の毛も下ろしている。
「なんなのよ。私の前にそんな格好で出てきていいと思ってるの?」
「いいえ。めっそうもございません。
ただ、寝る前の時間に少しためしにやってみたらもう見つかったものですから」
不機嫌なマリンと対照に、リリアは落ち着いている。
闇に強調される静かな様子と、下ろした長い髪がリリアを大人びて見せることもマリンをイラつかせる一因だった。
「何しにきたのよ?
私はもう自由なの。好きにしていいの。嫌なことなんて何もしなくていいの! だから来ないでよっ!」
マリンの叫びは突風となってリリアを襲う。
しかし、本体はそこに存在していないためにリリアはなんともない。