Snow Princess ~雪の華~
「旅先で思い出は作らないんだ。別れが悲しいからな」
「……」
語り部は少年の頭を撫でた。
「それに、この話はオレがけしかけて始まった悲劇だからな」
「それってどういう―」
「語り部の仕事は小さな罪滅ぼしってことで」
少年の頭をポンと叩いて語り部は背を向けた。
「じゃあな」
「ねぇ! さっきのお話のタイトル教えてよ!」
語り部はちょっと驚いた顔をして立ち止まった。
そして、しばらく考えたあと、ようやく口を開いた。
「Snow princessかな」
「白雪姫みたいな名前だね」
「あいつは白っつーよりどキツイピンクだがな」
少年は首を傾げたが、語り部はもう多くを語らず、その場を去って行った。