さくら木一本道
さくらは、痛みから解放された頬を労るように、なで回しながら誠雪に言った。
(さくら)「えっ!? もう終わり?」
(誠雪)「うん、終わり終わり、あとは俺がトラクターで土を回すだけだから、それともトラクター運転してみる?」
誠雪はさくらに、トラクターの鍵を向けながら言うが、さくらは首を横に振って遠慮するのだった。
(誠雪)「そう… 勇次はトラクター乗ると酔うしな?」
(勇次)「…ああ」
その会話を聞いたさくらが、手玉を取ったかのようにニンマリ笑い、勇次へのdisりを開始する。
(さくら)「えっ? あんたトラクター苦手なの? 農家の息子なのに? うわっダサ‼(笑)」
(勇次)「確かにうちは昔、親父が大きく農家やってたが今はそうじゃない、したがって俺は別に農家の息子じゃねぇ」
さくらの悪口に呆れつつ、勇次なりの理由を説明していくのだった。
(勇次)「それにトラクターが苦手なわけじゃない、ただなんとなく怖いんだよ、何となくな…」
(さくら)「乗り物が怖いとか、子供か‼(笑)」
(勇次)「ああ… お前の胸と同じで―
さすがにイラッときた勇次は、思わず言ってはいけない単語を口にしてしまった。
悪意はない、
むしろ導いたのはさくらの方である。だが―
(さくら)「ふんっ‼」
-ドカンッ‼-
(勇次)「な…」
次の瞬間には、
田んぼの畔による高低差を利用した、さくらの強烈な「ジャーマンプレス」によって、
勇次の頭部が田んぼに突き刺さったことは、言うまでもない…
-初めての農作業-
終わり。