さくら木一本道

また「しかめっ面」で勇次を見るさくら、不機嫌な声で勇次に問いかけた。



(さくら)「…じゃあなんだったらいいのよ?」



その問に勇次は頭を悩ませるが、なにも思い付かない、

殴られる覚悟で…

いや、それでも被害が少なくなるよう、オブラートに包んでさくらの問に答えたと思ったのだが、



(勇次)「すまん… 俺の知ってる仕事では見つからない…」

―ビシャアァ‼―



次の瞬間には勇次の顔めがけ、さくらが吹いたジュースが飛んできた。



(さくら)「マジウケる~(笑) 久々に吹いたわ」



「ウケる」要素など何処にもない、確実にわざとだ。

わざとなのは分かっているが、毎日殴られたり、蹴られたり、罵倒されたりしている勇次にとっては、これだけですめば御の字な方である。

それでも他人の吹いたジュースなど嫌なものだ。



(勇次)「……汚ねぇ…」



(さくら)「汚くない‼」



(勇次)「いや… 汚ねぇし」



ラウンジに置いてある紙ナプキンで顔をふきながら、勇次は低くなったテンションでさくらの希望を聞いてみた。



(勇次)「…て言うかさ、お前自身はどんなバイトしたいんだよ」



(さくら)「うーん… 楽で疲れなくて高収入なバイトがいい」



(勇次)「贅沢千万だなおい‼」



(さくら)「仕事を選ぶ権利は私にあるはずよ、どんな企業でどんな仕事内容、どれだけの労力を有するか、給料、各種保証、通勤の便、それらを踏まえた上で慎重に吟味し、選出していく権利が私には‼」



小難しい言葉を並べているが、簡単に言えば「仕事もバイト代も良いのを選びたい‼」と言っている。

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