さくら木一本道
(さくら)「え!? なに!? なんて!?」
意味がわからない急なネコ語にさくらは戸惑う。
(ユウキ)「そんにゃ不純性交遊、わたしゃーは認めにゃい‼」
そう言ってユウキは、さくらにまた飛びついて抱きしめる。
(ユウキ)「さくらちゃんは私と結婚するんだあぁぁ‼」
ユウキの妄想が暴走してとんでもないところまで飛んでいる。
さくらは訳がわからず、ひな鳥のように目をパチパチと瞬くだけだった。
(勇次)「…もうだめだ」
「何事か?」と周りの生徒が視線を集める中庭で、居たたまれなくなった勇次が、全てを諦めたような顔でさくらの肩に手を置く、
(勇次)「…お願いだから逃げるぞ」
そう言って勇次はユウキからさくらを引放し、脇に抱えてその場から一目散に逃げ出した。
(勇次)「本当に最悪だぁぁぁ‼」
ユウキから逃げ出した二人は、体育館の裏にある古い部室棟の前で立ち止まった。
(勇次)「ハァハァ… ここまで来れば大丈夫だろ…」
勇次は呼吸を整えようと深呼吸していると、脇に抱えたさくらがジタバタと暴れだした。
(さくら)「おー‼ろー‼せー‼」
それに気付いた勇次はとっさに手を離してしまい、さくらを地面に落としてしまった。
不意のことにさすがのさくらも対応出来ず、顔から地面に落ちるハメになった。
(勇次)「わ、悪い… 大丈夫か…?」
しばらく地面の上で悶絶するさくらだったが、途中からワナワナと怒りがこみ上げてきて、溢れんばかりの殺気が背中から伝わってきた。
「ああ…これは殴られるんだろな…」と潔く覚悟を決めた勇次は、これまた全てを諦めたような顔でその時を待っていた。
-バキッ‼グシャッ‼-
その微笑みにも似た顔は、予想通りさくらの剛拳によって潰された。