さくら木一本道
(お婆ちゃん)「鏡子さんに似てるよ、さくらちゃんは」
(さくら)「鏡子さんに…?」
(お婆ちゃん)「……この部屋のね、息子が事故で死んだ時も、鏡子さんは涙一つ見せなかったわ…「子供達に悲しい顔は見せない」ってね、笑顔で言っていた、正直その笑顔を見た時は嬉しかったの」
(さくら)「?」
(お婆ちゃん)「この人は本当に私の息子を愛してくれてたんだって分かったから… だって…」
お婆ちゃんは天井を見上げた。
(お婆ちゃん)「……だって あんなに悲しい笑顔は…」
(さくら)「……」
(お婆ちゃん)「だけどあんな笑顔は二度と見たくない… 私はもう若い娘が苦しんでるのを見たくはないんだよ…」
(さくら)「……」
(さくら)「…お婆ちゃん」
(お婆ちゃん)「ん?」
(さくら)「私… 帰れるかな… もしかしたらもう帰れないとか……!!」
お婆ちゃんはさくらの両肩に手を乗せ、笑みを浮かべながら、さくらの頭を撫でた。
(お婆ちゃん)「大丈夫よ… きっと帰れるからね。帰れるまでずっとさくらちゃんのために力を貸すから…」
(さくら)「……」
(お婆ちゃん)「一緒に同じ机でご飯を食べて、いっぱいお喋りもして、一緒に笑ったんだ、さくらちゃんはもう私の「大切な家族」だから…」
(さくら)「……」
あぁ…なんてこの人は…
暖かくて優しい人なんだろう、
私の嘘みたいな話を信じてくれて、
家にまで泊めてくれて、
この人が居なかったら、この先私はどうなっていただろう…
そしてあげくの果てには、私のために力になってくれると言う、
本当にこの人の心の広さを知った。
知ったからこそもう迷惑はかけられない…
(さくら)「……」
さくらは下へ顔を向け、お婆ちゃんから顔を隠す、
不安を見抜かれない顔を作るために…
さくらは顔を上げ、お婆ちゃんに笑みを見せた。
上手く作れたかはわからない…でも、
(さくら)「ありがとう……私は大丈夫、大丈夫だよお婆ちゃん… ありがとう」
(勇次)「……」
勇次は一部始終を聞いてしまった。