さくら木一本道
結局、昨日の夜の事も忘れて、また口ゲンカを繰り返す二人、余計な時間が過ぎたおかげでさくらの気力は回復した。
そして、また作業に戻ったのだが…
(勇次)「……何で俺とお前の仕事配置が変わってんだ…?」
「勇次が薪運び」
「さくらが薪割り」
と人事移動していた。
これにはさくらなりの理由があるらしい、
(さくら)「私分かったのよ、仕事がダラけたのは「薪運びに飽きた」からだって」
(勇次)「それで「仕事を交換」と…」
(さくら)「そう言うこと」
そういう問題ではなく、「さくら自身の性格の問題だと思う」と勇次は目で訴えるが、
(さくら)「何? 文句ある?」
と、さくらの睨み顔が振り返ってきた。
もはやどうでも良いので、さっさと仕事を続けることにした勇次だった。
(勇次)「イヤ… 別にいいけどよ、お前、薪割り大丈夫か? 結構重いぞそれ」
勇次はそう言ってさくらが持ってる斧を指差す。
(さくら)「大丈夫よ、イメージしてた斧よりもかなり小さいし」
さくらがイメージしていた斧とは、昔話のアニメやマンガに出てくるような、人の頭サイズの刃だった。
しかし、実際の刃はせいぜい人の片手と同じ程度だ。
(さくら)「それに、体力には自信があるしね」
(勇次)「あぁ… お前が薪を大量に運んでいる姿はまさに人の皮を被ったゴリラ…」
(さくら)「何か言ったかしら?」
気が付けば、勇次の顔面へさくらが手に持つ斧がビタッと向けられている。
さくらの顔は笑っているが、眉間にシワを寄せ、こめかみはピクピクと引きつっている。
これは確実に怒っている。
余計なことは口走るものではない、
(勇次)「な、何でもないっス…」
(さくら)「…まぁいいわ」
突き付けられた斧が目の前から離れ、勇次はホっ…と肩を撫で下ろした。
(さくら)「木をここに立てて「スパーン!!」とやればいいんでしょ?」
(勇次)「あぁ、自分の足切らないように注意しろ…って、お、おい…」
肩を撫で下ろしたのも束の間、勇次が見たときには、さくらは背中まで斧を振りかざし、胸を大きく張って、いつでも全力発進完了の状態だった。
(勇次)「ちょっとまて!! そんな振りかざさなくても切れるぞ!!」
(さくら)「何いってんの? こうゆうのは初めが肝心!!」
(勇次)「イヤ… 言葉の使い所が違う…ちょっ」
(さくら)「ふんぬうぅぅぅ!!」
(勇次)「待てぇぇぇぇ!!」
‐ズパーーーン!!!‐
(勇次)「……」